こんにちは、横浜市胃腸科のららぽーと横浜クリニックです。
皆さんは、「宿便性潰瘍」という病気を聞いたことがありますか?耳にしたことがある!という方はあまり多くない病気かもしれません。
今回は「宿便性潰瘍」はどのような病気なのかを解かりやすく説明していきたいと思います。
高度の便秘により大腸内に停滞した便が大腸粘膜を圧迫することで腸内の血液の流れを障害し、うっ血、血栓形成、壊死により腸に潰瘍ができる疾患です。
では、どんな症状が起こるのでしょうか。
高度の便秘に続き、突然大量の下血を起こします。
酷い腹痛に襲われそうだと思われるかもしれませんが、実は腹痛や肛門痛はあっても軽度です。
また、便秘症状が強いため便を出そうと浣腸や摘便(てきべん)などを行った際にその刺激で出血してしまう場合もあります。
このような機械的刺激により穿孔(せんこう:腸に穴があくこと)を併発し、より症状が重症化してしまうケースがあります。併発した場合は出血量が多く、輸血が必要なことがほとんどです。
宿便性潰瘍は出来やすい部分が決まっています。
直腸(6割)、S状結腸(2割)、他回腸末端部に出来やすいとされています。数値からも分かるようにほとんどが肛門の出口に近い直腸にできます。穿孔が起こるのはS状結腸が多いです。
治療方法は基本的に内視鏡的止血術と、潰瘍が浅い場合には糞便魂除去、絶食による腸管の安静が必要です。絶食をしている間は中心静脈栄養を行います。ただし、穿孔を併発してしまっている場合は人工肛門造設術や直腸切除術など外科的処置が必要になります。
(※中心静脈栄養とは…鎖骨下静脈から挿入し、先端部を上大静脈(心臓に近い太い血管)に留置します。高濃度の栄養輸液を投与することで、エネルギーをはじめ、体に必要な栄養素を補給することができます。)
症状や治療などを見てみると重篤な状況になり怖い病気ですね。宿便性潰瘍を予防する為にもこの疾患の特徴を詳しく知っておきましょう。
宿便性潰瘍になりやすい人はこんな人!!
では、宿便性潰瘍になりにくくするためにはどのような対策が考えられるのでしょうか。
高齢者の方が自身で気を付けることは難しいので、周囲の方が高齢者の便秘を理解しつつ、食事量、食事内容(食物繊維や水分摂取など)、排便回数、便の硬さを記録するようにしましょう。
便の硬さが安定してるかを把握し排便コントロールをしてあげることがとても大切です。
また、便意を我慢する事が習慣化してしまわないように、排便のタイミングを把握したり、落ち着いた排便環境を作っていくことも大切になってきます。
いかがでしたか?
宿便性潰瘍は主に寝たきりの高齢者がかかりやすい疾患です。痛みがあまりないのに下血している場合は宿便性潰瘍の恐れがあります。すぐに病院を受診し、検査をしてもらいましょう。
また、便が詰まっているからといって自分で指や道具を使い、便を出すことも穿孔に繋がる場合がありますので、摘便を行う場合、特に高齢者の方は病院を受診し、医師や看護師にしてもらうようにしましょう。宿便性潰瘍と併発してしまうと人工肛門や直腸切除などの外科的手術が必要になってしまう場合があります。
宿便性潰瘍にならないためには高齢者の便の状態や、食事などを理解し、寄り添うことが大切です。
便秘を引き起こす原因となる要素を少しでも減らしていくとよいでしょう。