便潜血検査とは、便の中の見えない血液を試薬で調べる検査のことです。
便の中に血液が微量でも混じってれば、癌やポリープなどの大腸の病気の可能性があります。
かつては食事で食べた肉などに反応してしまう試薬を使っていた時代もありましたが、最近では人の血液のみに反応する試薬を用いるようになりました(免疫法と呼ばれます)。
免疫法とは、少し難しいかもしれませんが、免疫反応(抗原抗体反応)を利用して人の血液だけを検出する方法のことです。肉食や鉄剤(貧血の薬)の影響を受けず、上部消化官出血(胃や十二指腸の出血)で陽性になることもないので、大腸からの出血の判定に有効なのです。
しかし、この便潜血検査にも盲点があります。
便潜血検査は簡単で安価なので、会社の健康診断などで広く普及していますが、実は癌の検出率はあまり高くないのです。なぜなら、大腸の病気があったとしても、便を採取した当日に出血していなければ陽性とならないからです。実際、便潜血を2回行ったとしても、進行癌で10%、早期癌で50%が2回とも便潜血陰性になってしまうのです。
つまり早期の大腸癌や大腸ポリープがあったとしても、便潜血検査で陽性になることは逆に珍しいということです。もし便潜血が癌により陽性になっているとすればその癌はもはや出血までしている進行癌である可能性が高いのです。
このような理由から、便潜血検査は近年では会社の検診等(多くの人数を安価で検査すべき場面)でしか行われません。医療機関での診療(その患者個人だけを高精度で検査すべき場面)では、大腸内視鏡検査が主役です。
当院にも便潜血検査で陽性が出て来院する患者さんが多くいらっしゃって大腸内視鏡検査を受けていきます。
が、医師の本音としては、上記の理由から便潜血検査などではなく、定期的に大腸内視鏡検査を受けることが正解なのです。