2014年、体調不良のため来日ツアーを全てキャンセルせざるを得なくなったポールマッカートニー。
その折角の来日ツアーをキャンセルしてしまうほどの体調不良の原因は「腸捻転」と呼ばれる病気でした。
今回は彼を苦しめた「腸捻転」についてお話ししたいと思います。
腸捻転は、腸が捻じれて腸内容物の通過が停止してしまった状態(腸閉塞の一種)です。
腸閉塞(イレウスと呼ばれます)にはいくつか分類があり、
① 機能的イレウス…腸管の運動障害で内容物が停滞しておこる
② 機械的イレウス…腸管の屈折やねじれ、腸壁の腫瘍(大腸ポリープ、大腸がん)などによって通過障害がおこる
の二種類に大別されます。
②の機械的イレウスは、更に単純性イレウスと複雑性イレウスにわかれます。(今回はイレウスの詳しい説明は省略します)
「腸捻転」はこのうち、②機械的イレウスの方に分類され、さらに複雑性イレウスに分類されます。
腸捻転の多くは腸への血流障害も伴うため「絞扼性(こうやくせい)イレウス」と呼ばれ、腸管の壊死という危険性もある怖い病気なのです。
主な症状は、腹痛・嘔吐・排便、排ガスの停止・腹部膨満です。
腹痛は、腸が捻じれて締め付けられるような激しい絞扼痛になりとても辛い痛みです。
嘔吐は初期からみられますが、その後も腸内容物が貯留することにより反復して嘔吐がおこり、閉塞部位が腸の高位(口側)であるほど嘔吐の出現は早く、頻回です。また、腸の下位(肛門側)の閉塞では糞臭を帯びてくるのが特徴です。
主な原因は、腹部の手術後の癒着・S状結腸軸捻症・炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病など)・高齢・便秘などです。
特に、高齢になると腸蠕動の働きの低下により便秘傾向となります。便が排出されずにS状結腸へ貯留すると腸に重みなどの負担がかる事により腸が捻じれてしまいます。また、骨盤が狭く腸の動きが抑えられがちな男性にも多く見られます。
「血液検査」:炎症反応や脱水をおこしていないか電解質のバランスをみます。
「超音波検査」:腸の拡張や消化液の状態をみます。
「レントゲン検査」「CT検査」:腸の捻じれや腸内のガス、消化液の状態をみます。
病院では腸の状態を把握するために上のようないろいろな検査を行います。その結果によって治療の方法を具体的に決めて行きます。
腸捻転の場所や具合によって治療法が変わってくることもあります。
腸捻転は全身状態が急激に悪化するため、緊急開腹手術を行うことが多いです。腸の捻じれを治し、癒着部分の剥離や伸びた腸管を切除します。
また、組織の壊死や腹膜炎のない初期であれば1週間~10日くらいの入院で、点滴などで脱水や栄養状態を観察しながら絶食し、鼻にチューブを挿入し、胃の内容物を吸引するなどの保存的治療を行う場合があります。
いかがでしたでしょうか…?
腹痛・嘔吐などの症状からご自身で判断するのは難しいですが、腸が捻じれて締め付けられるような激しい痛みが起こる方は腸捻転の疑いがあります。
腸捻転の多くは腸管の壊死という危険性がある怖い病気ですから、もしかしてと思ったら早めの治療(大体は緊急手術)が必要です。
ポールマッカートニーさんは翌年の2015年にはリベンジ公演を行うことができました。症状が出たらすぐに対応し、必要な治療をすることで予後も悪くないことがわかりますね。
日常的に便秘を予防し、症状がある場合は早めに医療機関を受診することが大切です。