お腹の症状があった時、多くの場合はCT検査やお腹のレントゲン写真だけでは正確な診断は出来ません。
特に大腸の病気については特にそう言えます。
大腸の検査にはバリウムを肛門から注入する注腸検査と、カメラを肛門から挿入する大腸内視鏡検査の二つの検査方法があります。
☆大腸のバリウム検査(注腸造影検査)とは
胃のバリウム検査はよく知られています(まずいバリウムを飲む検査です)が、大腸のバリウム検査はあまり良く知られていません。
一昔前は、「大腸の検査」というと大腸のバリウム(レントゲン)検査のことでした。
まずバリウム約300mlを肛門より大腸内に入れ、その後に空気を入れて大腸を膨らませた状態にします。
この状態のままで、「おなら」が出ないように我慢してもらいながら(大腸の中に入れたバリウムと空気が、肛門から外に出てしまわないようにするためです)、
合図にあわせて、体を右や左に動いてもらい、いろいろな方向から写真を15-20枚程度、10分から15分強で撮影していきます。
(患者さんにとっては、お腹が水と空気でゴロゴロと張った感じがしますが、痛みはありません。水分を取り、食事をすれば大腸は活発に動きだし、もとの状態に戻ります。)
・・・・・この時に撮影した写真はバリウムと空気による「影絵」のようなもので、「影」から病気の有無を判断することになります。
☆大腸内視鏡検査(大腸カメラ)とは
胃カメラと同じ原理と仕組みですが、大腸専用の電子スコープ(ファイバー:カメラ)で肛門から挿入し、腸の内部を観察する検査です。
私は「胃カメラのお尻からバージョン」と患者さんに説明しています。
フルカラーでテレビモニター上に映像を映して大腸を観察しますが、ポリープや癌などが疑わしい部分があれば、その場で組織の一部を採取したり、直接ポリープを切除(ポリペクトミー)して細胞レベルで調べる病理検査をしたりすることができます。
*切除時に痛みを伴うことはありません。最近は早期大腸癌に対して、内視鏡で切除術を施行する症例が急激に増加しております。
・・・・・つまり、大腸の表面を直接的に目で見て病気の有無を判断する検査であり、なおかつ病気を切除することもできる「治療的検査」なのです。
では、大腸を検査してもらいたい場合、一体どちらがいいのでしょうか?
・・・・・・答えは「大腸内視鏡検査」の方です。
なぜなら、注腸検査は内視鏡検査と同じだけの手間をかけて検査しなければならないのに、問題点が多いからです。
厚生省が発行している「大腸癌検診ガイドライン」によると、精密検査として「全大腸内視鏡検査を薦める。しかし内視鏡が困難な場合は注腸とS字結腸内視鏡の併用とする」となっています。
つまり「注腸検査のみ」は好ましくないという見解です。
注腸検査の問題点は以下の通りです。
・癌のうち、平坦型の病変はまず発見できない(専門病院が注腸を行わない最大の理由です)
・大腸癌はS字結腸に多いのですが、S字結腸は腸管の重なりが多く注腸の弱点となっている(進行癌でも見落とされる場合がある)。
・放射線被爆が大きい。特に生殖器も照射範囲に入る。
・腸に十分な量の空気を入れて膨らませて検査するため苦痛が大きい。
・注腸検査で病気が見つかった場合は結局、大腸内視鏡検査を行うことになります。
(参照)注腸検査と大腸内視鏡検査の比較
・・・・・いかがでしょうか。但し、大腸内視鏡検査にも問題点がないとは言えません。
大腸内視鏡検査の問題点は、ただ一つ・・・大腸内視鏡検査を苦痛なく安全に施行することができる専門科の医師が少ないことです。
経験の豊富な名人クラスの大腸内視鏡医は「軸保持短縮法」で検査を行いますが、この「軸保持短縮法」を完全に行える医師が多くありません。
なので、大変な思いをして下剤を飲んで準備をしたのに「検査で非常に苦しい思いをした」「腸の一番奥まで入らなかった」といった残念な話を時々耳にします。
大体10000件以上の経験を積んだ医師が検査を施行すれば大腸内視鏡は苦しくありません・・・「少しくすぐったい」程度の感じで検査が終了するはずです。
(参照)痛くない大腸内視鏡検査
結論です。
大腸の検査は「注腸検査」ではなく「大腸内視鏡検査」を受けましょう。
(多くの経験を積んだ専門の医師に検査してもらいましょう)