こんにちは。横浜市胃腸科のららぽーと横浜クリニックです!
普段から便秘でお困りの方も多いのではないでしょうか。胃腸科では男女問わず、便秘に悩んで来院する患者さんが多くいらっしゃいます。
何日もお通じがなくて辛い、お腹が張って辛い、薬を飲まないと便が出ない……そんな方にお尋ねしたい!
「大腸メラノーシス」という言葉を聞いたことはありますか?
「知らない!」「初耳!」という方が多いと思いますが、実はこの大腸メラノーシスは便で特に便秘薬を普段から服用している人に深い関係のある症状なのです。
今回はこの大腸メラノーシスについてお話ししていきましょう。
大腸メラノーシスは「大腸粘膜黒皮症」、「メラノーシス・コリ」と呼ばれることもありますが、全て同じものを指します(この記事では大腸メラノーシスと呼びますね)。
特別珍しいものではなく、日本では100人中3~15人には起こると言われています。中高年で便秘薬を服用している方に多い傾向があります。
「メラノーシス」という言葉自体は「メラニン沈着」や「黒皮症」等、大腸に限らず黒くなることを表しています。皮膚の色素沈着を思い浮かべる人が多いと思いますが、これはメラノサイト(皮膚細胞)が日光に反応して黒っぽくなるものであり、大腸メラノーシスとは別物です。
メラノーシスによる大腸粘膜の変色は、粘膜を観察できる大腸内視鏡検査で発見可能です。具体的には、大腸内視鏡で大腸粘膜を見た際に、正常ならピンク色のはずの粘膜が色素沈着により黒っぽいヒョウ柄になります。
※2014年撮影の正常な大腸粘膜(40代女性)
※同じ方の同部位の粘膜だが2018年にはメラノーシスが見られた
原因:
大腸刺激性下剤(アントラキニン系)と呼ばれる、お腹が痛くなるタイプの下剤を長期に渡って服用し続けることが原因です。一部ですがセンナ、大黄(だいおう)、アロエ等が大腸刺激性下剤と呼ばれる薬です。
大腸の変色は、大腸刺激性下剤に含まれるリポフスチンという物質が、免疫細胞と反応して大腸粘膜に沈着する為に起こります。
症状:
症状としては大腸粘膜の変色や機能低下が起こります。
痛み等の自覚症状はありませんが腸の機能低下により腸本来の働きが弱くなるため、ますます便秘が重くなりさらに下剤を服用しないと排便できなくなったりします。これは下剤依存とも呼ばれます(詳しくは後述します)。
大腸メラノーシスは下剤の服用をやめてから数年で正常な色に戻っていきます。
ですが、先述したように下剤依存となってしまうと大腸メラノーシスの改善は難しいでしょう。
と、いうのも腸刺激性下剤の成分は腸内細菌によってアントラキノン化合物に変化し、大腸粘膜や腸管壁を直接刺激、蠕動運動を促進、腸内の水分と電解質の量を増やすことで排便を促します。これらを長期間服用し続けると大腸の筋層の神経細胞が減少し、だんだんと作用が効きづらくなることがあります。これが「下剤依存」です。
下剤の服用を中止すると便が出なくなってしまうため、内服を続けるほかないからです。悪循環ですね。ですので、大腸メラノーシスを予防しようとすると、根本的には便秘を予防する必要があるということになりますね。
便秘に明確な定義は学会等により異なりますが、当院では2日以上排便がない場合を便秘としています(私は2日に1回で便秘、僕は5日に1回で便秘……と個人の感覚でそれぞれ違うこともあります)。
便秘は、過敏性腸症候群や腸閉塞、大腸癌、直腸癌等の重大な病のサインの可能性もあります。また、大腸メラノーシスに合併した大腸癌は多く、その関連性が指摘されていますが証明等はされていません。下剤を服用するときも下剤に頼りすぎるのではなく便秘の改善を考え、まずは便秘にならないことを心がけましょう。
それでも長く便秘が続くようであれば大腸内視鏡検査を行っている医療機関にかかり、胃腸科を受診して自分に合った薬の処方や必要に応じた検査を受けましょう。