薬は病気を治療する目的で使用しますよね。なにか症状がでたらとりあえず薬を飲むという方もいらっしゃるのではないでしょうか。
しかし、薬剤が原因で病気にかかってしまう場合があることをご存知ですか?
今回は「薬剤性腸炎」という大腸の病気についてご紹介したいと思います。
*薬剤性腸炎とは?
名前の通り薬剤で引き起こされる腸炎のことで、原因の多くは抗生物質です。
では、どうして起こるのでしょうか。
大腸内には「腸内細菌」という細菌が存在します。腸内細菌を大きく分けると、有用菌(善玉菌)、有害菌(悪玉菌)、日和見菌という3種類です。善玉菌と悪玉菌は聞いたことがあるのではないでしょうか。通常は善玉菌、悪玉菌、日和見菌が2:1:7の割合で腸内細菌のバランスが取れていると言われています。しかし、抗生物質を服用すると善玉菌のみを殺菌してしまい、善玉菌が減少してしまいます。そして、日和見菌は優勢なほうに加担する性質をもっている菌のため、日和見菌の支援を受け悪玉菌が優勢になってしまうと薬剤性大腸炎になってしまうのです。(善玉菌が優勢の場合は、乳酸菌群の作る 「有機酸」などの力で、悪玉菌の増殖は強力に阻止されるため、体調を崩すことはありません。)
抗生剤によって症状がおこるものは抗生剤起因性腸炎と分類され、さらに「出血性大腸炎」と「偽膜性大腸炎」の二種類に分かれます。
1.出血性腸炎
原因はいまだに解明されていませんが、抗生物質(薬剤名:サワシリン、フロモックスなどの、ペニシリン系やセフェム系の薬)の服用で多く見られます。
症状としては抗生物質を服用してから2~3日程度で、血性の下痢、腹痛の症状が表れ発症します。原因としては、抗生剤が何らかのアレルギー反応を引き起こし、大腸の血流を障害してびらんを作り、出血を起こすのではないかといわれています。
2.偽膜性大腸炎
原因はクロストリジウム・ディフィシル菌(以下ディフィシル菌)という菌が関係しています。ディフィシル菌は一部の健常者の腸内に定着する細菌で、菌の保有者に対して抗菌薬治療が行われると正常腸内細菌叢が撹乱されてしまいます。
その結果、ディフィシル菌の異常増殖と毒素生産が起こり、偽膜性大腸炎などの症状が起こります。
抗生剤(薬剤名:フロモックス、ダラシンなどの、セフェム系やリンコマイシン系の薬)を服用後5〜10日後に症状が現れ、水のような下痢が主な症状です。その他にも腹鳴、下腹部の鈍痛、腹部膨満感、発熱も伴います。出血性腸炎とは違い、血便はあまり見られないとされています。
*診断
抗生物質を内服していたという経過と各検査から診断します。
*治療
薬剤性大腸炎の原因が判明したら治療を行います。
出血性大腸炎は原因となった薬の服用を中止し、早く体外へ排出するため絶食を行います。その際、水分を十分に取ってください。脱水症状を防ぐために、点滴を行う場合もあります。
偽膜性腸炎は、クロストリジウム・ディフィシル菌に対する薬(メトロニダゾール、バンコマイシン、バシトラシン、サッカロマイセス・ブラウディ)を使用します。
ほとんどの場合は、これらの対処法で症状が完治します。
合併症を起こした場合は入院して集中的な治療を受ける必要があり、腎透析が必要となることもあります。
どうでしたか?
少しは薬剤に頼りすぎるのは危ないと思っていただけたでしょうか。
医師と相談し自分に合った量を服用して下さい。
また、副作用が出てしまった場合は早めに病院に行き検査を受けましょう。