大腸癌の発見に関する最近のニュースです。
(以下、ニュース記事)
三重大学の楠正人教授らの研究グループは4日までに、血液検査で大腸がんかどうかを92%の高確率で判定する手法を確立したと発表した。がん細胞が分泌する微細なマイクロRNA(リボ核酸)に着目した。がんの前段階であるポリープも高い確率で判定でき、発病前に治療することも可能になるという。米医療機関との共同研究。論文は6月に発行された米国立がん研究所の機関誌に掲載された。楠教授らは、日本人282人の血清を分析し、大腸がん患者は、大腸がんで多く発生する「miR―21」と呼ばれるマイクロRNAが健常者の約5倍に増えることを発見した。ポリープ患者でも約2倍になり、82%の確率で判定できる。0.5ミリリットルの血液があれば約3時間で判定可能という。
大腸がんでは、便に混じった血液を調べる「便潜血検査」や腫瘍マーカーによる検査が一般的だが、発見できる確率や精度が低かった。楠教授は新たな検査方法について「臨床試験が始まれば2年程度で実用化のメドが立つ」としている。
(以上、ニュース記事終了)
現在よく行われている「便潜血検査」は大腸癌があれば、その60%を見つけ出せる検査です。便潜血検査を2回行うことで、大腸がんの80%以上をキャッチできることになります。逆に言えば、自分が便潜血検査を行って2回とも陰性であっても、大腸がんの確率は1/5になったにすぎません。だから、結局は大腸内視鏡検査が便潜血の結果に関わらず、完全な大腸癌予防の為には、必要なのです。
対して、今回のニュースで書かれてある「血液検査(miR―21)」は、「大腸癌があれば、その92%を見つけ出せる」というのだから素晴らしい進歩です。この方法を2回行うと、大腸がんの99.5%以上をキャッチできることになります。これならば、もう「血液検査で大丈夫であれば、大腸内視鏡検査は必要ない」ということになるかと世間の誤解を招くかも知れません。
ここで問題は以下の点です。
・よくあることですが、こういうニュースの類は、数字が実際よりも良く書かれてあることが多い;92%は実効?
・偽陽性を避けるためにカットオフ値を下げたら、キャッチ率が結構下がってしまう;92%→??%
・「臨床試験が始まれば2年程度で実用化のメドが立つ」と書かれているが、いつのまにか立ち消えになることが多い(=上記2項目他がクリアできない);人々の記憶からも消えます
・コストは?
今後の動向が注目です。