「胃潰瘍」や「十二指腸潰瘍」は、もう皆さんご存知ですね?
(参照)胃十二指腸潰瘍とは
・・・実は、胃だけでなく大腸にも潰瘍はできるのです。
今日はその大腸に出来る潰瘍の原因の一つ、「アメーバ赤痢(アメーバ症)」について書きたいと思います。
「アメーバ赤痢(アメーバ症)」とは・・・
原虫である赤痢アメ-バ(Entamoeba histolytica)を病原体とする感染性大腸炎で、日本では感染症法において5類感染症に指定されています。赤痢アメーバは大腸に寄生し、糞便中にシスト(嚢子・包嚢)を排泄して感染する、また性行為で広がることもあるとされています。感染源はアメーバ症の回復期患者・サル・ネズミ・シストに汚染された飲食物などであり、感染経路はシストの経口感染やハエ、ゴキブリによる機械的伝播も起こります。
経口摂取されたシストが小腸で脱嚢して栄養型虫体となり、栄養型虫体が大腸粘膜に侵入し、潰瘍を形成します。潰瘍の好発部位は、盲腸から上行結腸にかけてとS状結腸から直腸にみられます。この「アメーバ赤痢」は、世界各地に分布しており、世界で約5億人が感染しているといわれます。
<症状>
粘血便を伴ういわゆる「イチゴゼリー状」と呼ばれる下痢・発熱・腹痛・悪心・嘔吐。なかには下痢が断続的に続き、脱水症状を引き起こす場合もあります。
<内視鏡所見>
回盲弁の発赤と上行結腸に黄白色の白苔を有する潰瘍性病変がみえます。
この他、大小不同で浮腫状のタコイボ様隆起、粘膜ひだの限局した浮腫、大小不同で不整な潰瘍、潰瘍辺縁の易出血性と発赤、紅暈を伴ったアフタ性病変という所見がみられます。
大腸内視鏡検査で、アメーバ赤痢らしき所見を見たら、やはり海外渡航歴の有無を伺います。特に発展途上国は上下道をはじめ衛生環境の整備が不十分であり、原虫をはじめ様々な細菌や病原性微生物を口にしてしまう機会が多くなるからです。