大腸の吻合部潰瘍とは大腸癌の手術をした患者さんの吻合部(つなぎ目)に出来る潰瘍のことです。
普通は「吻合部潰瘍」というのは、胃の話です。つまり、胃の手術をした患者さんの吻合部(つなぎ目)に出来る潰瘍のことを指すことがほとんどなのです。ところが、今回はあえて大腸がん手術後の吻合部潰瘍について書きます。
大腸の基本的な機能
大腸は水分の吸収をし、消化された食べ物を便として身体の外に出すという働きをする器官です。
皆様ご存知のように便は下痢でもしなければしっかりと形がありますよね?便秘の方は便が硬いと思うこともあるでしょう。
大腸の吻合部潰瘍ができるメカニズムはいくつか考えられます。
1、大腸がんで開腹手術をして、大腸を部分的に切除してつなぎ合わせる手術をしたとしましょう。硬い便が手術をしたばかりの吻合部に、繰り返しこすれるような刺激が加わったとしたらどうでしょうか?あたかも硬いたタワシで軟らかい新品のタオルをゴシゴシをこすった場合のように簡単に傷(潰瘍)ができてしまうのは想像に難くないでしょう。
2、あるいは、手術は患者さんの身体的な負担が大きく、加えて吻合部は血流がいきわたりにくくなっているものです。普段はお腹の中にいても平気な大腸菌さえも、吻合部に炎症を引き起こす一因となりうるのはないでしょうか。
3、次に、術後は大腸の構造そのものが変わります。そのため便秘や下痢などをすると、大便が長く腸の中に滞ったかと思えば、次から次へと水のような便を押し出したりします。腸壁にとっては無理矢理伸ばされたりぐっと収縮したりと、スパルタな?訓練を強いられ、本当は腸の傷口を修復しなくては行けないのに、便通によって腸の血流が妨げられて潰瘍をつくる場合も考えられます。
4、その他としては、腫瘍細胞が切除部位の近くに残っていて、局所再発した場合。がんの再発が、吻合部に潰瘍形成したように見えることがあります。
(大腸がん手術後の吻合部再発の内視鏡所見)
吻合部に1/4周性に潰瘍を認めた(写真右下)。がんの再発ではなかった。
大腸がん切除後は、術後の経過観察のために毎年の内視鏡検査が必要になります。吻合部の潰瘍はもちろんのこと、局所再発や異時性の大腸がんやポリープの発生をチェックすることが重要なのです。