今の若い人達は「寄生虫」と聞いてどんなものを想像するでしょうか?
寄生虫とは名の通り「人や動物の体内に寄生している生物」です。
寄生した宿主から栄養を摂取し、せっせと活動しています。
かつて、寄生虫が食べ物に紛れてヒトの体内に入って症状を出すことは比較的よくあることでした。
ところが、日本の農業が農薬を使うようになってから数十年経た現在では、寄生虫に罹患している患者さんを見かけることは稀になりました。
さて、今日は胃腸に住む寄生虫の話。
一番メジャーであろう「蟯虫(ぎょうちゅう;よく小学生の頃に肛門に貼り付けるようなシールで検査したやつです)」を筆頭に「回虫」「サナダムシ」「アニサキス」云々・・・他にも多くの寄生虫が存在しています。
さて寄生虫は人に対してどのような悪さをするのでしょうか。
寄生虫によって起こる障害を「寄生虫症」といいます。
主に腹痛、下痢、発熱、貧血、肺炎などを引き起こします。
虫が腸に寄生すれば腹痛や下痢を発症するのは当然のこと。
貧血を伴う訳はその虫が腸粘膜に噛み付き、そこから毎日出血しているからです。
幼虫が肺に入ると肺炎を起こし、胆道に入れば黄疸を引き起こすこともあります。さらに脳や眼球にも侵入してくる、やっかいなものもいます。
・・・・想像しただけで実に恐ろしいですね。
胃や大腸の内視鏡検査をした時に、寄生虫が見つかることがあります。
内視鏡で、寄生虫を取り出して検査に提出することもあるのですが、内視鏡検査で最も多く遭遇するのは「回虫」と「アニサキス」でしょうか。
「回虫」の場合の多くは、患者さんは無症状ですが、「アニサキス」の場合は、強い胃痛を伴います。
(参照)胃アニサキス症
ここ数年に関して言えば、オーガニックブームの影響なのかどうかはわかりませんが、寄生虫症の患者さんが増加傾向にあります。
「生ものは十分に洗浄してから口に入れること」
「できるだけ加熱された状態で口に入れること」
が(敢えて言えば)予防法です。
上に書いたような怖い症状がでることはレアケースですが、食べ物に寄生虫が住んでいる危険性を頭に入れておくだけで、食べ物の嗜好が変わるかもしれませんね。