大腸内視鏡.jP
医療法人社団LYC ららぽーと横浜クリニック監修
       
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大腸ポリープ・癌とは

大腸ポリープは癌の元

大腸ポリープとは、わかりやすく言うと大腸にできる「できもの」です。ほくろやイボとの大きな違いは、「大腸のポリープは癌の元」という事実です。
したがって、大腸ポリープを内視鏡で切除することが最も有効な大腸癌の予防法なのです。

大腸ポリープの種類

大腸の粘膜から発生するポリープには、癌化しにくいものもあります。

腺腫

腺腫

癌に発展する可能性の高いポリープであり、通常は内視鏡切除の適応です。

過形成ポリープ

過形成ポリープ

癌化する可能性が低いポリープです。大きさなどによっては内視鏡切除の適応になります。

炎症性ポリープ

炎症性ポリープ

癌化はしません。

ポイツ・イェガース症候群

ポイツ・イェガース症候群

食道をのぞく消化管全体にポリープが多発する遺伝病で、口や手足の先の色素沈着を伴います。

若年性ポリープ

若年性ポリープ

若年性という名前ですが成人にもよくあるポリープです。

ひそかに進行する、症状のない病気

大腸癌の症状としては「血便」「腹痛」「便秘」などが挙げられます。しかし注意したいのは、重度に進行した場合にやっと出てくる症状だということ。初期では、症状となり現れることは少ないです。

血便や便秘の症状があり、大腸内視鏡検査を受けた方から大腸ポリープが見つかることがあります。これはそのポリープが原因となって血便や便秘が起きていたわけではありません。偶然ポリープが見つかっただけなのです。また、残念ながら会社の健診で行われる便潜血検査では、大腸ポリープはほとんど発見することができません

このように発見が遅れやすいのが大腸癌の特徴ですが、幸いなことにほかの消化器系の癌(胃癌・肝癌・膵癌など)と比較すると予後が良く、進行速度もそれほど速くないことがわかっています。

定期的な大腸内視鏡検査が重要

日本人の食生活の変化に伴って、現在年間8万人以上が罹患し、癌の部位別では第2位と増え続けているのが大腸癌です。無症状のうちに大腸内視鏡検査を受けて、癌になる前に大腸ポリープを内視鏡で切除することで、大腸癌をほぼ予防できます。既に大腸癌になっていたとしても、転移のない早期の段階であれば、内視鏡で切除が可能です。

大腸ポリープができる原因とは

遺伝子の変異によるもの

人体の設計図である遺伝子(DNA)の変異が原因です。
食事、お酒の中に含まれる発癌物質によって遺伝子に異常が生じ、これが度重なることでポリープや癌が発生するとされています。
発癌遺伝子と癌抑制遺伝子は、よく「アクセルとブレーキ」に例えられます。双方の異常が重なることでバランスが崩れ、癌化が引き起こされるのです。

多段階発癌モデル

大腸の正常粘膜で遺伝子の変化がたて続けに起こり、まず大腸の良性ポリープである腺腫が発症し、後に大腸癌になるという考え方です。大腸癌発生に大きく関係する重要な遺伝子は複数あるとされています。
発癌物質によって最初にAPC遺伝子が変異すると、正常な大腸粘膜に小さなポリープができます。次に、K-ras遺伝子が変異すると、細胞増殖のスピードが増してポリープが大きくなります。
最後に、p53遺伝子とDCC遺伝子の変異により、ポリープは癌に変化して、転移しやすくなります。この一連の発癌経路のことを専門家は「多段階発癌モデル」と呼んでいます。

理論的には、大腸ポリープのうちに内視鏡で切除することによって、癌を完全に予防できる「多段階発癌モデル」。現在の日本では、大腸ポリープは内視鏡によって切除するのが、一般的な方法となっています。

多段階発がんモデル

その他の要因

大腸癌のまれなケースとして、発癌遺伝子であるK-ras遺伝子の変異がなく、腺腫が全く見られないものも存在することがわかっています。つまり、標準的な多段階発癌モデルとは異なる発癌経路(腺腫を経由しないで癌になる経路)もわずかながら存在するということです。この経路によってできた癌も、早期であれば内視鏡切除により治癒します。

食生活と癌の関係

「肉食」と「飲酒」が大腸癌の2大要因

肉食は大腸がんの2大要因の一つ

加工肉(ベーコン・ハム・ソーセージなど)や飲酒は、大腸癌のリスクを伴うことをご存じでしょうか。実際に、食肉が盛んな世界最大の牧畜国ニュージーランドは、世界で最も大腸癌の多い国となっています。飲酒については、焼酎やウィスキー、日本酒よりも、ビールが大きな誘因となります。

他の食事に関しては、脂肪分の多い食材や繊維質の少ない食材も大腸癌のリスクを高めます。 また、生活習慣では、肥満・便秘・運動不足も要注意。定期的に運動し、欧米食を控えて、快便を心掛けましょう。意外かもしれませんが、喫煙・ストレス・痔などは大腸癌の要因ではありません。

大腸がんを予防するには

最も確実な予防法は、定期的に大腸内視鏡検査を受けて、良性ポリープのうちに内視鏡切除してしまうことです。 以下に大腸ポリープや大腸癌の発生自体をできるだけ予防する方法を挙げますが、重要なポイントとしては、上記の「良性のうちに内視鏡切除」以外には、満足できるほどの効果はないということです。

野菜と果物の予防効果について

野菜と果物の大腸がん予防効果

2003年、世界保健機構(WHO)と食糧農業機関(FAO)は合同で、「野菜や果物には、大腸癌の予防効果がある」と発表しました。国際がん研究所(IARC)もこれに倣う報告をしています。野菜には食物繊維が大量に含まれるため、食物中にある発癌物質が大腸に停滞する時間が短くなり、大腸癌の予防に繋がるからでしょう。抗酸化作用のあるビタミンを含むことも、大腸癌の予防につながる一因だと考えられます。

しかし、注意したいのは、あくまで「予防的」であること。厚生労働省の2005年の研究(JPHC)では、「野菜・果物の摂取が少ないことは、大腸癌増加の主な要因とはなりえない」としつつも、「大腸癌予防に野菜・果物は効果がないと断言することは早計」としています。

また、大腸ポリープを切除した方がそのあとに菜食主義者になっても、大腸ポリープの予防効果はないことが近年の研究でわかっています。つまり、若いころの菜食が重要であり、ポリープを切除した後で食生活を変えても、直ちに効果はないということのようです。
ちなみに、野菜以外で食物繊維を多く含む食品は、穀類・イモ類・豆類・くるみ・ピーナッツ・果物・きのこ類・海藻類などです。

アスピリンの予防効果について

従来からアスピリンは動脈硬化や塞栓症(そくせんしょう)を予防する効果があり、現在では心臓病・脳血管障害の病歴を持つ患者を中心に、多くの方が服用しています。大腸癌の発症が、アスピリンを少量服用し続けることにより約40%抑えられるという研究が発表されています。また、大腸癌の進行や再発を抑制するという報告もあります。

しかし、健康な方が大腸癌の予防目的のためにアスピリンを服用すべきかは、意見が分かれるところです。なぜなら、副作用として止血しにくくなることがあり、特に消化管出血などの胃腸障害を引き起こす可能性が高まるからです。

大腸ポリープと癌は、遺伝傾向が強い

癌には、遺伝するタイプと遺伝しないタイプがあります。消化器系の癌の中では、食道癌、胃癌と比較すると、大腸ポリープ・大腸癌は非常に遺伝傾向が強いと言えます。このうち「家族性大腸ポリポーシス」と「HNPCC(遺伝性非ポリポーシス性大腸癌)」という二つの遺伝家系がよく研究され、遺伝子も明らかになっています。大腸癌は「遺伝子の変異がたて続けに起こって発生する」とご説明しましたが、これらの家系では生まれつき変異が起こっているのです。

「家族性大腸ポリポーシス」とは、100個以上のポリープができる遺伝病です。高い確率で大腸癌に発展しますので、診断がつき次第、大腸の切除を検討します。

「HNPCC」とは、大腸癌をはじめ、さまざまな癌(胃癌、子宮内膜癌、腎盂尿管癌、小腸癌など)が家系内に多発する遺伝病です。DNA修復遺伝子であるhMLH1,hMSH2などの変異によって癌ができると考えられ、全人口の0.3~0.5%が保因者とされています。HNPCCの臨床診断には、下記のような「アムステルダム基準」が用いられます。

  • HNPCC関連腫瘍を有する家族が3名以上あり、そのうちの1名が他2名の近親者である
  • 連続する 2世代で罹患している
  • 50歳以前にHNPCC関連腫瘍と診断された者が1名以上いる

特に「家族性大腸ポリポーシス」と「HNPCC」の家系の方は、早期に大腸内視鏡検査を受けて大腸ポリープや癌を発見することが必要です。