潰瘍性大腸炎は慢性炎症性腸疾患の一つです。慢性に消化管粘膜に炎症を引き起こす、いまだ原因不明の難治性疾患なのです。
(参照)潰瘍性大腸炎とは
陰窩膿瘍(crypt abscess)とは、潰瘍性大腸炎の患者さんの炎症粘膜の病理所見(顕微鏡で見た所見)のひとつです。医師は大腸内視鏡検査の時に潰瘍性大腸炎を疑った場合に組織の生検を行い、顕微鏡所見でもって確定診断を下すことになります。潰瘍性大腸炎の確定診断に有用な所見が、この「陰窩膿瘍」なのです。
では、「陰窩膿瘍 crypt abscess」の実際の写真をば。
顕微鏡検査で陰窩膿瘍 crypt abscessを拡大したもの。腺管内に炎症細胞が充満しています。
粘膜層の強拡大で炎症細胞(リンパ球や形質細胞、好中球)の著名な浸潤が見られます。また、(1)の部分に不正な形態を持つ陰窩が存在しています。
上の写真と解説文でわかりましたでしょうか・・・・
病理所見って、どこがその部分なのか、わかりにくいんですよね。
専門医師以外は、わからなくても特に問題ないのかもしれません。
「陰窩膿瘍」は潰瘍性大腸炎に比較的特有のものとされて降り、確定診断の目安と理解してもよいでしょう。
潰瘍性大腸炎の病理所見は、この陰窩膿瘍以外には「腺管杯細胞の減少」「上皮の変性・脱落・消失」などもあります。腺管には構造異型として異常分岐や大小不同がみられる事があります。
潰瘍性大腸炎と診断された患者さんは必ず一年に一度は大腸内視鏡検査をうけて、病状の確認をして下さいね。「陰窩膿瘍」の確認のほか、全大腸炎型の方は罹患してから7~8年以上経過すると癌化し始めることが分っています。また、潰瘍性大腸炎の治療の心得ですが、再燃再発時は【早期にしっかりと治療する事】がとても大切となっています。悪くなってから治療を始めるまでの時間が長い程、寛解導入にも時間がかかってきます。